御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
御曹司、片思いに身を焦がす

 雪成が美月の存在を知ったのは、山邑リゾートの新館オープンに伴う出張先でのことだった。


(よく降るな……。そういえば梅雨入りしたばかりだったか。)


 商工会議所に呼ばれて地元企業の会合に参加した雪成は、周囲の送るという誘いをすべて断りハジメの迎えを待っていた。


(彼らがこの時間からまっすぐ帰してくれるはずがないからな……。)


 雪成もかなりイケる口ではあるが、ここの人たちは際限がない。付き合うのも一苦労である。

 そうやって、会議所のエントランスからどんよりとした空を眺めていると、背後から軽やかな声がした。


「傘をお持ちじゃないんですか?」


 振り返ると、地味な事務員服を着た若い女性が立っていた。


< 260 / 323 >

この作品をシェア

pagetop