御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
エピローグ


「俺のおかげだよね、ほんと」


 ハジメはスマホを手の中で弄びながら、執務室から新館ヴィラのある方向に目をやった。


 美月をわざとらしく口説いたのは、新館で美月にどう話したものかと悩んでいた親友を、無理やりここに連れてくるためだった。

 通話状態にして、自分の声を聞かせたのだ。


「……いやでも……飛んでこなかったら、マジでキスしてたかな……? あー……たぶんしてたな。みっちゃん可愛かったし……。やべ、こんなことバレたらユキに殺される……」


 一人芝居風にブツブツとつぶやくハジメであるが、その頬は喜びで緩んでおり、心から雪成と美月を祝福しているつもりである。


 常々ハジメは、雪成の友人として彼を誇りに思っていたが、同時に“優しすぎるし真面目すぎるんだよな”とも思っていた。

 学生時代に菜穂と付き合うと聞いたときも、“菜穂のことを、まったく女としてみてないのにすげぇな”と思ったくらいである。


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