永すぎた春に終止符を
君がどんな人なのか知りたい


オフィスの喫茶コーナーにお湯をもらいにいって、原田幾美さんを見つけた。



「やっぱり、御一緒してもいいですか?」
梨沙は、彼女の後姿に声をかけた。

お湯いるの?
と幾美さんは、指でジェスチャーをして答えてくれたが、梨沙の言った意味はもちろん、コーヒーに注ぐお湯のことではない。

「先週言ってた、飲み会のことです」

幾美さんは、ミルクと砂糖で味を調えてからマグカップをかき混ぜ、
ふっと笑みを浮かべた顔を向けて言う。

「彼氏どうしたの?」
拓海と会うかも知れないからと、梨沙は誘いを断っていた。


「別れましたから、問題ないです」
私は、カップにお湯を注ぎながら言う。


「別れた?何で」
幾美さんから、笑みが消え心配そうな顔になった。


「ちょっと、色々あって…」


幾美さんは、何だ…そうっだったんだ。と声を漏らし、心配してるって顔と好奇心が顔を覗かせた。
「分かった。詳しいことは、また後で」



「はい。後で、飲み会の件、後で詳しいこと教えて下さいね」


「ん…いいよ」


「話を聞いていただいて、ありがとうございます」


「どういたしまして。いろいろある時期だよね…」

先輩は、すれ違いざまに梨沙の肩をポンと叩いてから、幾美さんは、一口コーヒーをすすってから席に戻っていった。


29歳で選ばれない女が、35歳で選ばれるわけない。
幾美さんの言葉が背中を押してくれた。
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