常務の秘密が知りたくて…
客人たちがもたらすもの
 私のデスクの端にも密かに飾らせてもらっているダイヤモンドリリーにふと目を遣る。飾ってから一週間が経過するが、まだ元気に花を咲かせているので自然と笑顔になった。今日は午後からここに来客予定だ。

「よー。長丘、久しぶり!」

 約束の時間五分前にきっちり部屋のドアを開けたのは亀山商社の坂本様だ。突然の来客に私は顔面蒼白になって立ち上がる。

「坂本様、お迎えにも上がらず申し訳ありません」

「ええよええよ、慣れとるし気にせんとって。ってあれ? また秘書が代わったん?」

 最後の言葉は常務に投げかけたものだった。来客があれば受付から連絡が入りここまで社員が連れてくるか、私が迎えに行くのが筋なのだがこの人は慣れているからという理由でここまで一人で来てしまったらしい。

 坂本様は眼鏡をかけて、茶色く染められた髪はやや長めだった。エリート商社マンというので緊張していたが独特のイントネーションと話し方から気さくそうなのが伝わってくる。

「これ土産な」

 常務の返事を待たずに坂本様から手土産を渡され、私は恐縮しながらも受け取りお茶の準備にとりかかる。坂本様がソファにどかっと座ると、常務も自分のデスクから移動してきた。

「よかったら俺、紅茶にしてもらえん? お菓子もそれに合うんを持ってきたから」

 突然のリクエストに私は給湯室に紅茶の茶葉もたくさんあったのを思い出す。

「こいつは、いつも紅茶なんだよ。俺も同じものでいい」

「かしこまりました」

 常務から付け足され給湯室に急ぐ。紅茶を客人に出すのは初めてだが、本で勉強して練習もしてきたので一通りの淹れ方はマスターしているつもりだ。

 私はアールグレイの茶葉で紅茶を淹れて、そして坂本様がお持ちになったお菓子も一緒に出すことにした。

 あの感じだと常務とは仕事上の付き合いを超えて個人的に親しいのだろう。もしかしたら、この茶葉も坂本様のために用意しているのかもしれない。そんなことを考えながら私はお盆にお菓子と紅茶をセットし二人の元へ運んだ。
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