部長っ!話を聞いてください!
5、部長が冷たい

窓がしっかり閉まっていることを確認し、私は部長への誕生日プレゼントが入ったショッピングバックを手に取った。

もう一度中身を確認する。

可愛いラッピングが施された小箱に、私のメッセージ付きの朝顔の種。


「いざ出陣!」


自分を奮い立たせるようにそう言ってから、玄関へと向かった。

いつ渡すのが良いだろうか。

タイミングを色々考えた結果、昼休みに手渡すよりは、いつも出勤が早い部長に合わせて私も早めに会社に行き、朝のうちに手渡すことにした。

人の目があまりない時に渡す方が、私も余計な緊張をせずに済むと思ったのだ。

だから今日は、いつもの家を出る時間よりも、三十分以上早い。

靴を履きながら、ちょっぴり咳き込んでしまう。

昨日はこれでもかというくらいに、消臭スプレーをまき散らしてしまったので、それの匂いがきついのだ。

視線を室内に戻し、床の上に折りたたんである布団を見た。

やっぱりベッドで眠ることなどできなくて、友人が泊りに来たとき用にしまってある布団を引っ張り出したのだ。

しばらくは、布団にお世話になる予定である。



玄関から外に出て、気持ちを切り替えるように深呼吸した。


< 30 / 74 >

この作品をシェア

pagetop