黄金の覇王と奪われし花嫁
3章
どうしてこんな気持ちになるのだろう。

ユアン自身にも理解できないドロドロした感情に振り回され、すっかり疲れ切ってしまった。


ガイールはユアンの自慢の父だった。
ずっと父の強さを誇りに思ってきた。

バラクはガイールを認め、純粋にその才能を欲しているのだ。

娘として誇らしいことの筈なのに・・・
なぜ、自分は素直に喜ぶことができないのだろう。

バラクを受け入れるどころか、顔を合わせるのすら苦痛に感じるのはどうしてだろうか。



「その下手な寝たふりをいつまで続けるつもりだ?」

バラクが寝台に横たわるユアンの耳元で囁いた。
数日はユアンの寝たふりに騙されたふりをしてくれていたようだけど、我慢の限界なのだろう。

「俺を避ける理由を説明しろ」

珍しく語気を荒げたバラクに詰め寄られ、ユアンはしぶしぶ起き上がった。

理由もなく避けられているバラクの苛立ちは十分理解できるが、ユアンは何も答えることが出来なかった。

だって、ユアン自身が説明してもらいたいくらいなのだ。

このモヤモヤする感情がどこから来るのか。

バラクを見つめるユアンの顔は憔悴し、瞳には力がなかった。
その顔を見たバラクは眉をひそめた。


「俺が何かしたかーー?」

「いいえ」

ユアンは力なく首を振った。
バラクのせいではない。自分自身の問題だ。

それなのに、バラクに対して怒りにも似た感情が湧き上がってくる。

自分はいつからこんなに嫌な女になったのだろう。女々しくて、感情的で、聡明さの欠片もない。
< 27 / 56 >

この作品をシェア

pagetop