女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~

2、彰人のお仕置き



 ホテルに隠れて3日目。

 本当にダラダラ~っと過ごしてきて、酒を摂取しておらず、家事もせずに済み、妊娠を秘密にしておく相手もいないので、私は元気になっていた。

 ううーん。もう休息はいいかなあ~・・・元気になっちゃったし、家でも帰るか?そんなことを思いながら、ホテルの前の公園のベンチに座ってパン屋で買ってきたサンドイッチを食べていた。

 もう夏前で、気温はかなり上がっていた。

 母が持ってきてくれていた日傘で太陽を避けてはいたが、風がやんでしまって真夏なみの暑さだった。

 化粧もしていないので、流れ落ちる汗も手の平でぐいぐい拭う。夫婦喧嘩の夜にコップで切った傷も塞がれつつあった。

「あっつ~い・・・」

 独り言にも飽きてきた。

 妊娠したことを桑谷さんにどう切り出そうかで悩んでいた。避妊してないんだから、出来る可能性があることは彼も判っているはずだ。だけど、やはりいざとなれば驚くはず。私だって驚いた。

 手紙でも書いて机においとく?

 プロポーズの時みたいに電話で言ってみる?

 いやいやいや、それよりは・・・・・

 流れる汗と同じペースでダラダラと考えていた。

 ふと顔を上げると公衆電話が目に入る。携帯は電源を切ってホテルの部屋に置きっぱなしなので、誰かに電話をしたければあれを使うしかない。

 私はちょっと考えて、ゆっくりと立ち上がった。


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