イジワル同期とスイートライフ
ねえ、教えてよ
携帯を胸ポケットにしまうと、久住くんは正面から私を見据えた。



「お前がやってるのは、契約違反だ」

「え…」



…契約?



「特定の相手作るのは、なしだって、最初に言ったよな?」

「そう、だけど」

「わかっててやったってことか、たち悪いな」



嘲るように吐き捨てられる。

この糾弾に、気持ちがついていかず戸惑った。


契約違反。

腹を立てているのは、そこなの。

そこだけ、なの?



「別に、須加さんだって、そんな深い意味で誘ってくれたわけじゃ」

「じゃあ俺から訊いていい? どういうつもりですかって」

「やめてよ」



親指でお店を指す彼に、思わず声をあげた。

久住くんが面白がるように眉を上げる。



「語るに落ちたってやつだな」

「そんなんじゃないって…」

「俺とのこと、まさか話したんだろうな?」



つい正直に、目が泳いだ。

だってこんな中途半端な関係で、話せるわけないじゃないか…。



「自覚ないなら、教えといてやるけどさ」



片手をポケットに入れて、久住くんが笑みを消した。



「それ、もう一回誘ってほしいって意思表示にしか受け取れないぜ。俺から見ても、須加さんから見ても」

「そんなつもりじゃないよ」

「じゃあ伝えてこい、自分には相手がいますって」

「言えないよ、そんなこと!」

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