愛しのカレはV(ヴィジュアル)系




「ねぇねぇ、璃愛…
今度のCLOWNのライブ、行くよね?」

部室で、フェルトをぷすぷす刺しながら、さゆみがぽつりと呟いた。



「CLOWN?何、それ…」

「もう~っ!忘れたの?
シュバルツが休んでる時、クロウさんとケインさんがやってたバンドあるじゃない?
あの時のヴォーカルのリクとギターのキースが作ったバンドだよ。」

「そうなの?」

「もう~…璃愛ったらしっかりしてよね!
あ……そっか。あんた、あのバンドは行ったことなかったんだっけ?」

私は小さく頷いた。



「CLOWNはシュバルツの弟バンドって言われてるバンドなのよ!
だから、多分、暇だったらシュバルツのメンバーも見に来ると思うよ。
瑠威は何も言ってなかった?」

「う、うん、特に何も……」

「そっか…じゃあ、瑠威は来ないのかな?
残念だな……」

さゆみはそう言って、小さな溜息を吐いた。



「あ、そうそう!
こないだのパンダ、お客さんにもらわれていったよ。」

「そうなの?良かった。」

「うん、けっこう年配の人だったけど、すごく嬉しそうにしてたよ。」

「そう…これも出来たら誰かにあげてね!」

私は手芸は好きだけど、どっちかっていうと作る作業が好きで、作品が出来上がってしまうと、それ自体にはあまり執着がない。
だから、さゆみのご両親がやってる喫茶店に置いてもらい、気に入ってくれた人に持って帰ってもらうようにしている。
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