愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
しばらくして、キラさんとハルさんが戻って来て…
四人で他愛ない話をしてたら、急に客電が落ちて…
タイトルはわからないけど、なんだか懐かしいような物悲しい雰囲気のSEが流れ、客席にざわめきが広がった。
私も期待でドキドキして来た。
どんなバンドなんだろう?
曲も全然聴いたことないけど、ノレるかな?
こんな前にいて、突っ立ってるんじゃ申し訳ないもんね。
なんとかノラなきゃ…
こんなことなら、さゆみにCD借りてお勉強してから来れば良かったよ。



「迷宮のサーカスへようこそ…」

囁くような低い声…
それと同時に、ステージを眩いライトが照らし出し、女の子の黄色い歓声が上がった。
ステージ上は、なんていうのか、独特の雰囲気…!
中世のヨーロッパの貴族みたいな衣装を着て、メンバーは皆モデルさんみたいに細くてかっこいい。
ベースの人はピエロのようなメイクをしてた。
あぁ、さゆみの言ってたことは本当だ。
前の方は後ろとは全然違う!
まだメンバーが出て来ただけだっていうのに、鳥肌が立つような衝撃を感じた。



1曲目はノリの良い曲で、知らない曲だからノレるかどうかなんて心配はいらなかった。
周りの人の動きに合わせ、自然に身体が動いてしまう。



(みんな、本当にかっこいいな。)



そんなことを思ったら、メンバーの顔を見るのがなんだか恥ずかしい。
しかも、メンバーとの距離がすごく近いんだもん。
恥ずかしいから俯いたまま、激しいビートに身を任せた。
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