309.5号室の海
◇◇◇2.


「ほれ、洗いざらい吐け。吐きまくれ」

「うう、これは卑怯だと思うんだけど……」


ある日の昼休憩。

珍しく奢ってやると言った滝本が連れてきてくれたのは、いつも満席で入れないカフェレストラン。なんとわざわざ予約して席を取っておいたのだとか。

席についてから、奢って欲しかったら恋煩いの話を聞かせろと交換条件を出してきた。
奢ってくれるなんて、珍しいことがあるもんだなと思ったときに気がつくべきだったと、後悔しても遅い。


「今なら食後のフラペチーノも付けてやる」

「うあっ、なんて魅力的な!」

「はっはっは、観念しろ」


まあ、別に聞かれて困るものでもないし…、滝本とは何の関わりもない人だろうし…、ここのパスタ美味しいし、フラペチーノ食べたいし。


「……実はね」

「観念するの早いなオイ」


ニヤニヤした滝本がメニュー表を手渡してきた。
最初からこうなるってわかってたくせに、しらじらしい。


「ランチのAセット!パスタは和風明太子、サイドはサラダでドリンクはアイスティー!」

「はいはい」


店員を呼んだ滝本が2人分の注文をしてくれた。滝本はロコモコ丼にスープ、アイスコーヒーのセットを頼んでいた。

念のため、店内に見知った顔がないかを確認してから、ゆっくりと話し始めた。

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