【完】『大器晩成』
◇2◇

定時制の高校を出ると眞姫は、北新地のキャバレークラブで、レイナという源氏名で働き始めた。

もともと居酒屋で鍛えられていたから客のあしらいは馴れたもので、すぐさまトップを争うほどの稼ぎ頭になったが、

「レイナちゃん、花を持たすってのも世の中大切やで」

と黒服に言われたことがあった。

というのも。

女だらけの仕事場は嫉妬や陰口が渦を巻いている世界で、売り上げを競っていた同僚のホステスにハイヒールの踵を折られたり、イヤリングの片方を捨てられたりなどというのは、ざらであったからである。




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