興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
★★★
あ、課長…。

「…おはようございます」

「おはよう」

普通の挨拶だ。いつもと変わらないように思えた。

「藍原、休憩時間に少しいいか」

「はい…」

やはり普通にはならないか…。当たり前よね。まだ話がありそうだったのに、逃げ帰って来てしまったんだもの。

「無事に帰ったのか?」

「はい…あの…すみませんでした…」

まともに顔も見られないし、ろくな返事も出来ないでいた。

「いや。ちゃんと帰っていたのならそれでいい。じゃあ、また後で声掛けるから」

「…はい」

…はぁぁ。…重苦しい。こんな事になるなら、昨夜の内に何もかも話して済ませておけば良かった。放置すれば、少しずつ鈍よりする事が増して行くだけなのに。
課長の話って何だろう。昔言った事に、まだ何かあるのだろうか。
私は…、私の思いの話をちゃんとしよう。その上でちゃんと失恋すれば、終わらせられるだろう。
そりゃあ、最初は喪失感のようなモノに襲われるかも知れないけど、それは仕方ない事。
そのままにしてたって、いつかは現実として、気持ちの行き場が無くなるのだから。
上手く話そうなんて思わず、ただ好きでしたと伝えたらいい。好きです、ではなく、でした、と。それで思いは終わらせられる。
はぁ…。今まで午後の休憩時間が来るのを、こんな思いで待った事は無かったな。
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