興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
★★☆
話をする前に、俺は俺で心の整理をしておかなければ、…そもそもちゃんとした話も出来ない。

俺は…一体…。


「藍原」

「はい」

「ちょっといいか?」

「…はい」

そんなに人の居ない時間帯を選んだつもりだ。
休憩時間はとうの昔に終わっていたし。
藍原に声を掛け、休憩室に誘った。


「ブラックでいいか?」

ちょっと前に珈琲は飲んだばかり。ブラックは止めておこうかな。

「カフェオレにします。あの、私のは私が買います」

「だから。珈琲の一杯や二杯で、どうこうしようなんて企まないからって言ってるだろ?…安心しろ。
はい。…熱いな、気をつけろ?」

「すみません…有難うございます。
頂きます」

「藍原、時間が無い。単刀直入に聞く」

…ゔ、私が聞かれるの?……何を?何だというの。

「この前、藍原は俺の事を、ずっと好きだったと言ってくれたよな?」

「あ…はい」

確かに言いましたよ。でも、その事ならもういい。言うべき事は言った。そして終わらせた。
課長の言葉はもう聞きたくない。
私は告白して…もう終わらせたんだから。

「でも、あの、そのことなら…」

「その気持ち。今はどうなんだか知りたい」

!!…今はって……そんな…今がどうこうなんて関係ないですよね?

「もう、好きだと…はっきり言い切れる程、好きじゃなくなったか?」

…そんな事。……好きですよ?そう簡単に、好きがなくなる訳じゃない。まして……嫌いになる訳じゃない。そういう事ではない。言えない。
もう…気持ちを蒸し返したくない。

「この“間"が、この前とは気持ちが違うって事なのかな」

…あ、…確かに。

「会社だし、…仕事中だ。本来こんな話はこんな形でしたくないんだ。
出来れば時間を作ってくれないか?ちゃんと話がしたいんだ」

話がしたいって、どうして…、何を話したいのですか?
押し黙ったままで居る訳にもいかない…。

「…時間は作れます、いつでも構いません。
課長が都合の良い時で構いません。
ただ…、私は…、課長から聞きたい話は…ありません」

もう、いいの。今更、知りたくない事は直接聞きたくない。
付き合っている人がいるらしいとか、結婚するなら、したって…噂になって知るくらいで、…もうそのくらいが丁度いい。
一層のこと、もう嫌いです、と言った方がいいのかも。

「はぁ。それでも聞いて貰う。
藍原は自分の事を言って…それでいいかも知れない。だったら俺の話も、ちゃんと聞くくらいの配慮は持ってくれてもいいんじゃないか?
とにかく、また連絡するから。こっちの都合で…待たせてすまないが」

落ち着いて話すには、ちゃんとした時間の確保が必要だ。それは解っている。…解ってほしい。

心遣いが足りない、か…。確かに、聞きたくない事から私は逃げている。
聞かないという選択は出来ないのね。

「…はい」
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