イジワル御曹司と花嫁契約
お前以上に大切なものなんてない
母の手術の日程が決まったのは、遊園地デートからわずか三日後のことだった。


私はそれまで、東郷病院に転院して、最高のスタッフをつけてもらい手術ができるという安心感から、もう母の病気は治るものだと思って呑気に暮らしていた。


だから彰貴への恋心なんてものが生まれてしまったんだろうし、デートにうつつを抜かすことができた。


 でも、病院に呼ばれて手術の詳細を聞いた時、私はなんて間抜けだったのだろうと、まさに地獄に突き落とされたような気分だった。


 母の手術は私が考えていた以上に大がかりなものだった。


がんを含む背骨を特殊なのこぎりを使って丸ごと切り取り、それをマイナス200℃の液体窒素で凍結し、その骨を砕いてチタン製ケージ内に詰め込み、脊椎にはめ込むというのだ。


凍結処理で死滅したがん細胞を体に戻すことによって体の免疫系が活性化され、体の中に残っているがん細胞を攻撃してくれるのだという。


これによって、まだ目に見えない血液中を泳いでいるがん細胞を根こそぎやっつけてくれるのだ。
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