イジワル御曹司と花嫁契約
君は二度、捨てられる
人間とは身勝手なものだ。


自分から別れを告げたくせに、まるで被害者は自分と言わんばかりに心がズタズタに傷付いている。


傷付けたのは自分なのに。


彰貴のお父さんから恐ろしいプレッシャーを受けたとはいえ、決断したのは自分なのに。


　ああ、なんだかもう、全てが嫌になる。


　今日は母の退院日。


冷たい秋雨が降る中を、傘をさして病院へと向かう。


まだ時刻は昼前だというのに、空はどんより灰色で薄暗かった。


　彰貴と別れてから四日目。


文字通り私は死んだように毎日を過ごしていて、お母さんと萩原さん夫婦、しまいには病院の先生や看護婦さんにまで心配されるほど、笑顔が消えて覇気がなくなっていた。


「どうしたの？」と聞かれても「体調が悪くて」としか答えられない。


触れてほしくなかったし、話したくなかったし、思い出したくもなかった。
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