イジワル御曹司と花嫁契約
運命を呪う
「初デート、初キス……初……」


 チラシの裏の白紙に落書きするようにボールペンを走らせていると、急に恥ずかしくなってぐちゃぐちゃと文字を黒く塗り潰した。


 彰貴との初デートから早いもので十日が過ぎた。


そろそろ寝なければいけない時間帯なのに、胸の奥がざわついていて眠れない。


例えるなら、糸が絡み合って取れない、あの苛々するようなかんじ。


別にそのままにしておいてもいいのだけれど、なんだか気持ち悪い。


自分の中で渦巻いているモヤモヤした気持ちにもがき苦しんでいる。


理由は分かっている、全てあいつのせいだ。


とりあえず縺れた糸を解こうと、自分の気持ちを書き殴ることにした。


書くだけでストレス発散になるっていうし、自分の気持ちを文字に起こすことで客観的になれるかもしれない。


そう思ってとりあえず書いてみたはいいものの、初デートの時のあの衝撃的なお泊りのことを思い出して、顔から火が出るどころか、体から発火するんじゃないかっていうくらい恥ずかしくなった。


でも、あの出来事を思い出して、私の胸の奥で感じている気持ちは恥ずかしさだけじゃなくて……。
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