未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
奈々子と智也

 髪を昨日かおるから、もらったリボンモチーフのバレッタで、留めてロッカーを出ると、男性用ロッカーから見知った後ろ姿が出たとこであった。

「松本さん!おはよう。」

 奈々子はドキドキしながらでも、そんな気持ちを悟られないように、素っ気なく声かける。

 呼べれた智也は、ふって微笑んで、手を軽くあげる。

「おはよ。奈々子、大丈夫か?」 

 心配そうに、奈々子の顔を見ながら様子を窺ってくる。
 
 微笑みながら、でも心配してくれる、嫌みぽくない、智也の表情が、奈々子は好きだ。

 奈々子はすぐに昨日のことを言われていると思い、智也も知ってるのかと苦笑いしながら、智也の顔を下から覗き込む。

「あっ、うん。大丈夫。みんなの視線が痛いけど。」

と、答えた。智也は、どこまで知ってるのか、聞こうか聞くまいか思案する。

「まっ、奈々子らしいよ。未来が見えないって、はっきり言うの?」
 
 智也にそう言われ、奈々子ははっとして、智也を仰ぎみる。

「えっ。何でそのこと…。」

「あっ、悪い。ちょうど用事があって、会場にいたんだよ。」

 智也はすまなそうに言う。

 奈々子は、"いや、いいんだけどさ。"と、ポツリとつぶやいた。

 あの場面を見られたのは正直恥ずかしいし、見られたい場面じゃなかったけど、噂で変な風に、面白いおかしく、伝えられるよりは言いかと考えをかえる。
 
「はっきり言った方がいいんだよ。あんなやつには。」

「うん、そうだね。」
 
「司会が焦ってたけどな。応援に来てたやよいさんも、慌ててた。」

 "ん?さっき、やよいさん、なにもいわなかったのにな"と思いながらなんで慌ててたんだろうと、奈々子は思う。

「あっ。今日、夜、8時半に、ほのぼのだよ。」  

「ん。また、急にだな。」

「ふたりが決めた。」

「奈々子愚痴会かな。」

「だと、思う。」

 二人は、社員ロッカーから職場までを歩きながら話す。歩くときは、必ず歩調をあわせてくれる。
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