乙女は白馬に乗った王子を待っている
仕事を舐めるな(怒)!
次の日、ゆり子が9時に事務所(オフィスと呼べるほどしゃれたところではない)に着くと、高橋はすでに出勤していた。
「今日は、9時半に派遣希望者が来る予定だったよな。一緒に話をするから、そのつもりで。」
「私が面接するんですか?」
ゆり子は戸惑った。
無理やり正社員にさせられたと思ったら、今度は派遣の登録に来る人の面接だ。
「やれることは何でもやってもらう。何しろ、社員は権藤一人だからな。」
「……社長、本当に給料、出るんですか?
っていうか、労働条件とかそういう話、一切聞いてないんですけど?」
「条件出してもいいけど、今のウチの経営状態じゃ、どうなるかわからない、ってのわかるだろ?」
「ですけどね、社長、私にも生活ってモンがあるんですよ。」
「まあまあ、それぐらい何とかなるだろ。」
ゆり子の話は全く聞き入れてもらえそうもなかった。
それにしてもヒマである。高橋は何やらパソコンでいろいろ調べ物などをしているようだが、ゆり子は手持ち無沙汰だった。
9時半まであと10分ぐらいある。
「社長、登録者を増やすためにどうしたらいいですかね。
広告打たなきゃダメなんじゃないですか。」
「確かに。どこにどうやって打てばいいか考えてくれ。」
「私が、ですか!?」
「君以外に誰がいる?」
一応、ホームページらしきものはあるが……、ほとんど更新されていないし、派遣の仕事も載せてない。
これじゃあ問い合わせなどあるはずがない。
ゆり子は他社のホームページや派遣の検索サイトなどを調べ始めた。
「ネットだけだとウチみたいな極小は非常に厳しいですね……。
とにかく登録者が来てくれなければ話にならないじゃないですか。」
高橋とゆり子が登録者をどうやって増やすか何となく雑談をしているとすでに10時近くになっていた。