溺れる恋は藁をも掴む

女心

 「最高の理解者か‥‥‥
悪く言えば都合がいいって感じだけど、良く言えばそんな関係もアリなのかな?」


 目の前に座る香澄が呟いた。



 頭では理解しても、心がついてゆけなかった。

 自分だけでは、アキとの関係をこれからどうしたらいいのか?考えても悩むばかりだった。

 一夜限りのそういう関係というのも、切なくて……

 かと言って、セフレのような関係も抵抗があった。

 私の中のアキは、手の届かない存在だった。
高校時代の淡い恋心は大切な思い出。

 手が届かないと思っていたからこそ、私も高校を卒業してから、今までの間、恋もしてきた。


 私だって女。
 やっぱり愛されたい!

 相思相愛で結ばれるセックスなら、心から喜べる。

 またアキへの恋心が再び芽生えたとしても、きっと辛くなる……

 それを抑えてゆける程、大人の女にはなりきれない‥‥

 高校の時代の友達にはこんな事話せない。
アキを知る人には絶対に言えない。

 それくらい、アキはみんなから慕われていて、私とこんな風になるなんて、まさに青天の霹靂くらいの衝撃的な事件だろう……

 いくら、私が痩せて、高校時代より見た目がマトモになったとしても‥‥

 誰かに相談して、その事が何処からか漏れて、面白おかしく言われてアキに迷惑も掛けたくなかった。


 だから、アキの事を全く知らない、香澄にまた頼ってしまった。

 恋をしても、この人のアドバイスなしでは、右も左も進めない、ビビリな私。

 私にとっての香澄という存在は、親友でもあり、腹の底に溜めた感情を素直に吐き出せ、それをしっかりと受け止めてくれる人。

 自分の意見を嘘偽りなく、オブラートに包まず、ハッキリと言ってくれてる。

 同い年のなのに、頼りになる姐御的存在だった。
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