ぼっちな彼女と色魔な幽霊

翌日の放課後。ハァと溜め息を吐きながら、美術室のモップがけをしている。

幽霊なんて産まれてから一度も見たことがないし、そもそも昨日のあれは幽霊なわけはないと思う。

足もあるし、本を戻せるし、どう見たって人間だった。

しかし、二嶋くんに声をかけられた一瞬の間に姿を消すなんてどんだけ素早いんだ。

絶対独り言をつぶやいてる変な女だって思われた。それが一番ショックだった。

今、視界の端に二嶋くんが見えるけど、直視できない。わたしと関わりたくないと思われていないといいな。

「あと終わりにしよー!」

才伽ちゃんが解散の声をかけた。

美術室を出て雑巾を洗ってから戻ると、みんないなくなっていた。

……帰るの早い。

雑巾干しに雑巾をかけ、出て行こうとすると、物音がした。

あれ? まだ誰かいた?

振り返り、辺りを見ると誰もいない。

美術室を出て左手を見ると、美術準備室のドアが半開きになっていた。

こっちも掃除なんかしてないよね?

不安になり戻っていいのか迷った。そっと中を覗き、一歩入る。

誰もいなかった。
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