優しい嘘はいらない
Contact 4 (縮む距離)

不安と緊張で寝つけなかったのは一緒だったようで思わず笑っていた。

「私も…」

「なんだ…杏奈も⁈そんなふうに見えないから、私だけこんなにドキドキしてるんだと思ってたよ」

「そろそろ時間だね」

「どうしよう…緊張する。この服変じゃないかなぁ?」

いつもより、大人ぽく着飾った志乃は背後に座る男達の目を引いている。

確かに今日の志乃はいつも以上に気合いを入れ、メイクも服装も髪型も大人可愛い感じに仕上げてきたようだ。

先ほどからチラチラとこちら側を見て声をかけるタイミングを伺っている背後の男達だが、志乃は待ち人が気になって気づいてない。

お店の入り口付近が見える席に陣取る私達は、待ち人が来るのを今か今かと待っている。

志乃ほどじゃないけど…私の緊張も増してきて、喉が渇いてきた。

テーブルの上にあるビールに手をかけ喉を潤すと、志乃も私もと言って同じようにビールに口をつけていた。

重曹の扉が開く。

女性の視線を集める2人組が私達を見つけたようで、何やら囁き合いこちらに笑顔を向け歩いてくる。

女性達は遠巻きに彼らを見つめ、彼らの連れが誰なのかを見定めている。その気配を察しながら、志乃は得意気に顔の横で手をふる。
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