憧れの染谷くんは、いつも
3人のエレベーター
・・・・・


「うう、お腹いっぱい……」


歩くだけでふらふらと体が揺れる。
結局最後は高瀬くんに手伝ってもらったけれど、それでも苦しかった。


「松井って前からそんなに小食だったっけ? ちゃんと飯食ってる?」


食べてるよと言うと、どうだかなーと返される。高瀬くんは時々口は悪いけれど、親身になってくれて優しい。


「ごめん。私がもたもたしてたから遅くなっちゃった」


急ぎ足で会社まで戻る。脇腹がキリキリ痛んだけれど、遅刻するよりマシだ。
私たちがビルに入ると、ちょうど降りてきたエレベーターのドアが開いたところだった。


「ふう、間に合った……」


エレベーターに乗り込むと、私は思わず壁に手を付いた。急いだため息が上がってしまい、肺が痛い。


「あのさあ」


顔を上げると、高瀬くんがエレベーターのランプを見上げながら言った。私に比べて余裕の表情だけど、こめかみの部分に汗が滲んでいる。


「松井は、もう少し色んな方向から物事を視た方がいいよ」

「色んな方向……?」

「今まで疑問に思ったことないか? 〝染谷は何でこんなに自分に構ってくるのか〟とか」

「染谷くんは私だけに構ってる訳じゃないよ」


染谷くんが優しくて周りへの気配りも良くできることは、私だけでなく皆知っている。


「……松井の悪いところは、思い込みの激しいところ、だな」

「そんなこと」


ないよ、と言いたかったが、思い当たる節があった。昨日も染谷くんに考えていることを当てられたし、もしかしたら本当に思い込みが激しいのかもしれない。
はは、と苦笑が漏れる。

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