アメトムチ。
キョクチョウトドウセキ
そして昼休み。

「原ちゃんって、メガネ男子が好きだってのは知ってたけどさ。野々瀬局長みたいな顔が好みのタイプだったの?」
「そんなことないよっ!私、もうちょっとボケッとした顔の方が好みかな。アハッ」
「あ、そう」
「わっ」

突然降ってわいたように上から聞こえた彼の声に、ビックリした私は、お箸に持った出汁巻卵を、テーブルに落としてしまった。

ああぁ、私の出汁巻が・・・!
ズンズン下降するだけの気分をちょっとでも上げて自分を元気づけようと、綾乃さん特製の大好きな出汁巻を奮発注文したのに。
あぁ、出汁巻一口分の幸せすら、私から遠のいていく・・・。
野々瀬局長に驚かされたばっかりに。
一体この人は、私の人生をどこまでひっかき回せば気が済むの!?

私はムスッとした顔で、野々瀬局長を睨んだ。
社長の息子とか、伝説の貴公子とか、そういうことは丸無視して。

でも野々瀬局長は、そんな私を丸無視しながら、「ここ空いてる?」と聞いた。
私にではなく、より子に。


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