いつかそんな日がくればいい。【短】
想い人


「ねぇ、あれ何?」


白田さんの指差す先にあるのは、一際甘い匂いを漂わせた屋台。


「あぁ、ベビーカステラじゃない?」


「あれって、甘いの?」


「うん。甘いよ」


「買ってくる」


「え!?まだ食べるの!?」


驚く俺に見向きもせず、白田さんはベビーカステラの屋台に走って行ってしまった。



買ってあげたリンゴ飴は見事完食。


あれを完食するって考えただけでも、口の中が甘ったるくなる錯覚に襲われるっていうのに、


次はベビーカステラって…。


どんだけ甘党なんだ。


それでもって、あの小さい体のどこにそんな食欲があるのか。


しかも、なんやかんやすごい楽しんでるし。


ベビーカステラの紙袋を持って、嬉しそうに戻ってくる彼女を見て、思わずぷっと吹き出しそうになる。


「ハイ!松田君っ」


「え?…もがっ!?」


白田さんは、俺の口に無理矢理ベビーカステラを押し込んでくる。


突然口の中の水分を全て持っていかれた俺は、窒息するかと思ってちょっと焦った。


「ちょっ…!急に何してっ…」


「さっき、リンゴ飴買ってくれたお礼よ。美味しい?甘いの嫌い??」



普通それは、先に聞くべきじゃないのか…。



でも、少し心配そうに俺を見上げる白田さんが妙に愛らしくて…


「…っ…美味いよ」


ついそう答えてしまう。
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