あなたの願いを叶えましょう
6. 王子の事情
翌日―――

信号が青に変わり、先を競うように人々が交差点を渡って行く。

その波にもまれて、私は競歩選手さながら早足でぐんぐんと会社へと向かう。

黒澤波留は私に嘘をついていた。

なんであんな嘘をついていたのか本人の口から直接聞かないと気がすまない。

昨日のショッキングな出来事を胸に私は鼻息荒く東亜電鉄本社ビルに出勤する。

絶対にとっちめてやるんだから!!

不機嫌全開の仏頂面で、ビルの裏手にある社員用エントランスを通りかかる途中、後輩男子花本とすれ違う。

彼は私の顔を一瞥するなり、負のオーラを敏感に察知してサッと目を伏せた。

空気を読む、という点において花本はヒューマンスキルを身につけたようだ。
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