あなたの願いを叶えましょう
4. 王子のご指摘
「この間、冨樫さんが電話越しに印刷会社の営業をガン詰めしててさー、その後みんな怯えて声掛けらんなかったんだよ」

軽快な語り口でいかに私が凶暴であるかをみんなに披露している。

何これ…デジャヴ?

一級建築士だという黒澤波留の友人も可笑しそうに笑っている。

本日は二回目のプレゼントバイ黒澤波留の異業種交流会が開催された。

気づけば、前回から2週間ほどの時が経っていた。

だけど全く同じパターンっていうね。

黒澤波留は女の子達にチヤホヤされて、私はピエロに仕立てあげられる。


…誰からも、連絡先を聞かれる事なく、送ってもらう事もなく、駅までを独りトボトボ歩くこの虚しさよ。

期待が高まれば高まるほど、収穫がなかった時の落ち込みはまたひとしおだ。

初秋のひやりとした風が吹き抜けて、私はブルリと身震いする。

何これ。寒い…寒くて死にそう。

黒澤波留はまた女の子と消えた。

この合コン(もう異業種交流会と言う気すら起きない)は私のためじゃなくてヤツの為に開催されているんじゃないかっていうくらい。

キラキラ光る街のネオンも今日の私の目にはにはなんだか禍々しい。
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