【完】さらば憧れのブルー
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拓からの情報で、私の前住んでいたところはゴールデンウイークに行ったホテルがある町だということが分かった。

一紀はそれが分かった時に、「雄太郎さんは、優花の知り合いに会うかもって思わなかったのかな?普通隠したいんだったら、わざわざそこに行く必要ないじゃん」と不思議がっていた。

一紀はまずは行動っていう感じがするけれど、意外にも色々なことを考えて行動するタイプみたいだ。
 

真面目に考え込む一紀を見て菜子が、「一紀がいなかったら、私たち思い付きで行動してだめだったかもねえ」と感心しながら言っていた。
 


「気分は、名探偵」
 


なんて、冗談っぽく言っていた一紀だけれど、きっと自分のお姉さんである美由紀さんが絡んでいたということもあって、色々と私を気遣ってくれているのだと思う。
 
私よりも率先して動いてくれるのは、いつでも一紀だった。



一紀は、私のバイト先の店長の小嶋さんの娘の真由ちゃんの家庭教師を引き受けることになった。

はじめは雄太郎さんにお願いするつもりだったのだが、私と雄太郎さんが喧嘩しているのを気遣って、『誰かいい人いない?』と小嶋さんが聞いてきたのがきっかけだった。

一紀にそのことを話すと、『数学なら』ということで、一紀のバイト先があっさり決まった。

それ以来、授業が終わると一紀と二人でバイト先へ向かうのが日課になった。


平日部活がある菜子は、『いつも二人でずるい!』と言って一紀にやきもちを焼いている。 




バイトへ向かう途中一紀が、「優花が家に戻って以来、姉ちゃん雄太郎さんに会いに来てる?」と聞いてきた。

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