僕は君に夏をあげたかった。
花火と告白
佐久良くんと連絡がとれなくなって1週間。

私は毎日あの海を訪れ、町中を探した。

でも全く会えないどころか、おじいちゃんも商店街の人も何も教えてくれない。


そうして、私は気づく。

私は佐久良くんのことを何も知らなかったんだと。

どこに住んでいるのかも、普段は何をしているのかも

信じられないことに、LINEの交換すらしていなかった。

海に行けば会えていた非現実感が、私に深く考えることをやめさせていたのかもしれない。


想いが通じあって、彼のことを誰より近くに感じていたけれど

本当は、こんなにも簡単に繋がりを見失ってしまう、頼りない関係だったのだ。


(……佐久良くん)


彼に会えない毎日は、こんなにも味気なくて、苦しい。

セミの声も、波の音も、ぎらつくような日差しも、今の私には全てうつろで、全く胸に響かない。

満たされていた気持ちは嘘のよう。

私の中は空っぽだった。
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