結婚も2度目だからこそ!
「……」



私、高森京香(たかもりきょうか)は、とあるものを見て、茫然と立ち尽くしている。

入籍して3か月。
まだバリバリの新婚である。

結婚式もまだ上げておらず、つい一週間前に人気の結婚式場に予約してきたばかり。


入籍後、晴れて私の夫になった圭悟(けいご)に、

『俺の給料だけでもやっていけるから、お前は家のことをよろしくな。ゆくゆくは子供も出来るだろうし』

って言われて、先月働いていた職場をめでたく退職し、専業主婦になった。


今日は昔からの友達が、ささやかな結婚祝いのパーティーを開いてくれるってことで、電車で一時間ほどにある実家へ里帰り。

圭悟は仕事をしているのに、私だけがこんな好きなことしちゃってもいいのかな、って少し申し訳ない気持ちだったけど、圭悟は快く送り出してくれて。

パーティーでは『幸せな家庭を作りなよ』とか『おめでとう!結婚式にはよんでね』とか、私の門出を祝う言葉をたくさんもらってきたばかりだ。

本当は実家に泊まって明日帰るつもりだったけど、新婚ってこともあり圭悟も寂しがっているだろうな、なんて思って、泊まらずに帰って来た。

圭悟には帰るってことを伝えていない。
ちょっと驚かせようかな、とそんな悪戯心が働いていたから。


いきなり帰ってきたら圭悟はどんな顔をするんだろう、ってワクワクしながら、駅からアパートまでの道のりを歩いていた、ほんの数分前。





――そんな思いが、目の前の光景にガラガラと音を立てて崩れていく。



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