結婚も2度目だからこそ!

お願い

ロビーで待つこと30分ほど、楽器の入ったケースと楽譜や衣装が入っているであろう袋を抱え、先輩がやって来た。

いつも仕事帰りでしか先輩を見たことがなかったから、私服姿を見るのは初めて。
丸エリの白いシャツに灰色のジャケット、そしてGパン。

別に普通の私服なのに、先輩が着ているからか余計格好良く見える。


「お待たせ。じゃ行こうか」

「は、はい」


先輩の後ろを追うようにして、私たちは近くの喫茶店に足を運んだ。


少しレトロで、静かな雰囲気の店内。
落ち着いたジャズが、迷惑にならない程度のボリュームで流れている。

空いている席に座る。
先輩は重い荷物を椅子に置いて楽になったからか、ふう、と大きく息を吐いた。

そして一息付いたところで、先輩はメニュー表を見ながら聞く。

「えっと、京香ちゃんはコーヒー飲める人?」

「はい。大丈夫です」

「じゃあホットでいいかな?」

それに頷くと、先輩は店主にホットコーヒーをふたつ、と注文した。


辺りにコーヒーのいい香りが漂う。
その空間はとても穏やかで、心が安らぐ。


「……で、何かあった?」

店内のいい雰囲気に和んでいると、突然先輩が私に言った。
いきなり言われるものだから、思わずドキッとしてしまう。


「……え!?」

「何かあったでしょ?顔色が冴えない」


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