クールなCEOと社内政略結婚!?
第一章

①悲劇の種を蒔く男

 会議室にはすでに、ブライダルデザイン部のメンバーが集まっていた。部屋はすでにスライドの準備がされていて、灯りが落とされている。それでも遅れてしまった私は、体を小さくして、頭を下げ謝罪しながら自分の席についた。

「もう、あさ美さん。遅いですよ」

 隣に座る、私のアシスタントをしてくれている岡部梨花(おかべりか)ちゃんが、小声で話しかけてきた。

「ごめん……つい夢中になっちゃって」

 後輩に叱られるなんて、情けない。しかし、いつもしっかりものの梨花ちゃんの言うことは正しい。

「デザインもいいですけど、時間はきちんと守ってくださいね。私が電話しないと、夕方まで戻ってこなかったかもしれませんね」

「そんな、大袈裟な」

 あまりの言われように、苦笑を浮かべた私に、梨花ちゃんがため息をついた。

「それでは、秋冬コレクションに向けての会議を始めます」

 進行役の一課の課長が、マイクをとり会議がスタートした。

 私が勤めるこの【株式会社 アナスタシア】は現在の社長、浮田孝文のフランス人の祖母が創業者だ。ブランド名も彼女の名前「アナスタシア」からつけられている。

 最初は社員が数名の、ウエディングドレスを作る小さな会社だった。しかし、その斬新かつ緻密なデザインが日本人を虜にし、数多の結婚式場から注文が入るようになり、急成長を遂げた。
< 4 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop