腹黒エリートが甘くてズルいんです
最後に、道端でポケットティッシュを配っているお姉さんのような藤のかごを持ってにこにこしているサユミと、新郎と、両家のご両親の恐ろしく長く感じられるトンネルを通過すれば、終わる。


おめでとうございます、お綺麗でしたね、幸せになってね、などなど。

月並みな言葉を交わしてお別れすれば、あたしの任務は終わる。


よく頑張った、あたし。
いい勉強になったよ、あたし。


他力本願じゃだめなんだわ、幸せはそう簡単に落ちてない。

何の友情も無いような子の結婚式に、大してお祝いの念も抱かずにのこのこ参加しちゃ駄目なんだ。

お相手のお勤め先に、良からぬ期待をしてはいけないんだ。

段々と近付いてくるサユミの花嫁姿を見ながらぼんやりと思った。

でも、おめでとうとは思ったから。せめて、心からおめでとうと言って、終わりにしよう。


おめでとう、サユミ。
幸せになってね。

あたしも頑張ります、色々と。

早く帰ろう、あたしの城であるアパートへ。
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