腹黒エリートが甘くてズルいんです
何度か断ったけどダメで、というより、あたしの後ろに詰まった招待客達の視線が痛くて、断りきれなかった。

『二次会からは、ダーリンの会社の若手達も来ることになってるんです』
『あたしの友達、みんな小さい子がいたり、妊娠中だったりで、参加者少なくて……莉緒さんみたいな美人さんが居れば、華やぐって言うか……』


期待しちゃいけない、と思いつつ、サユミの台詞が魅惑的に聞こえてしまう学習出来ない女が、そこにいた。


だってあんまりだと思ったんだ。

このまんま、家に帰って、箱から五枚組のカレー皿なんか取り出した日には、泣いてしまうかもしれないと思った。


同じテーブルの女子達は、悪いけど、そんなに魅力的ではなかった。よく言えば包容力のありそうな優しい感じだったけど、あの人達が誰かの特別な存在で、あたしが誰からも必要とされないという事実は地味にあたしを傷つけた。


絵に描いたような金屏風の前で、それに負けないほどの頭皮と笑顔が輝きを放つ旦那さんと結婚したいかと問われたら、答えは勿論ノーなんだけど。
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