腹黒エリートが甘くてズルいんです
駅までの道をひたすらに歩きながら、ふと思い当たる。


分かった。


この感じ。この、自己嫌悪にも似た、息が苦しくなるような感じ。


中学生の頃、酒井君と変な感じになって、ギクシャクして……ってときに味わったのと似てる。

あれから沢山月日が流れて、酒井君のことを思い出しもせず、別の人を好きになったり、喧嘩したり、と色々してきたのに。


巡りめぐって、今更また同じ人に同じような気持ちを味わわされているという。
なんなんだ、一体。


そう、昔から酒井君は掴み所がないんだ。
良い感じに話せたなーなんて思っても、急に素っ気なくなったりして、あたしもどうしたらいいか分からなくて。


こんな歳にもなって、またそんな気持ちになるなんて思わなかった。
34歳ってもっと落ち着いていると思ってたよ。

駅が見えてきたところでふと立ち止まり、後ろを振り返ってみる。
まるで何かに願掛けをするような気分でいたけど、そこには勿論誰もいなくて、さっきまで乗っていた車もいなくて。
当たり前なのに、息を止めて振り返った自分が少し惨めだった。
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