腹黒エリートが甘くてズルいんです
あ、なるほど。
やっと、由依の行動の真意が分かった。
わざわざ雑誌を持ってきて、ページをめくってみたりして。

おかしいと思ったんだよね。大抵の情報はネットで済むわ! と豪語して、紙ベースの雑誌類を買うのは好きなイケメン俳優のインタビュー等が載っている時が殆どのはずの由依が、特に何の目的もない感じでページをめくっていて。

他愛のない会話で、買い物に誘うことで、あたしを外に連れ出そうとしてくれている。


あの日……酒井君に『既婚者のふりをしてお前を騙してた』と言われた日、以来。
目に見えて落ち込んでいたであろうあたしへの気遣い。


申し訳ない。仕事はちゃんとやっていたつもりなんだけど。


確かに、あの日からもう1ヶ月が経とうとしている。
あたしも、いつまでも落ち込んでいても仕方ないと分かっている。


でも、どうしても、やる気がおきない。
あの時酒井くんが言っていた『最後に』は、会話のしめではなくて、『もう二度と会わない』の意味だったんだろうか。
いくら考えても分からないけど、あれ以来何の音沙汰も無いのが答えなのかな。
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