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「ね、どうだった? 松永物産、田舎支社」


メイクのノリも悪く、気分も大して良くない月曜の朝から、更衣室であたしの不調にとどめを差すような一言が飛んでくる。


声の主は振り返らなくても分かっている。同期入社の佐藤由依(さとうゆい)だ。

由依は、絵に描いたように都会育ちの女子だ。
恵まれた環境で屈託なく伸び伸びと育ち、整った顔立ちで人懐っこく笑う様子はまるで辺りに花が咲いたようで。
いつも堂々としていて、何にも屈さず、臆さず、凛としている。
華がある人というのは本当にいるんだな、と感動した入社式はもう12年前のこと。


「田舎支社、って……まあね、的確な表現だけど」


隣に立ち、あたしより10センチほど高い位置で、しっかりとかかっているデジパーを丹念に細い指先でくるくると生き返らせている由依に向かって、ため息混じりに返事をする。