腹黒エリートが甘くてズルいんです
ぐだぐだ文句を言い続けていた先輩も、さすが社会人のはしくれ。

営業先との約束の時間が迫っているようで、やっと解放されることになり、二人で会議室を出て歩く。


「じゃあ、あれな、またなんか作戦考えるからさ、お前もいざって時はよろしくな! 俺のお陰でこの間部長に怒られずに済んだもんね、莉緒っち♪」


最終的に脅しとも取れる捨て台詞を吐きながら去っていく出光先輩。
鬼だ。
あの、仕事でのミスをカバーしてくれたのはこういうときの為だったのだとしたら、『なんていい先輩なんだ』と心底思ったあの日のあたしの感動を返してほしい。


でもまぁ、どう贔屓目に見てもサユミのアラフィフ旦那様が、本社のカワイコちゃんと知り合いだとは思えないから、『いざって時』は永遠にやってこないのがせめてもの救い。


せいぜい自力でアタックし続けて玉砕するがいい。


たったさっきまで、70点、だなんて上から目線で採点したことは棚にあげて、あたしは先輩への呪詛を脳内で唱えつつデスクに戻って事務作業を進めた。
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