秘めた想いが実るとき
揺れる金曜日

「あ、唯香さん。小松さんと韓国料理を食べに行こうって話をしてるんですけど、一緒にどうですか?」

仕事を終え、更衣室で着替えをしていたら美優ちゃんが声をかけてきた。

小松さんは今年三十歳の独身で、かなりの食通だ。
表紙に“美味しい店リスト”と書いているノートをいつもバッグに入れて持ち歩いている。

よくタウン誌に載っているような人気の店から穴場の店など、ありとあらゆる店をリサーチしている。

外観は「え、ここで食べるの?」なんて思うようなお世辞にも綺麗と言えない中華料理屋のチャーハンが絶品だったり。

ひとりでいろんなところに出かけていて、美味しかった店はノートに書き込んでる。
だから、彼女がおススメしてくれたお店はハズレがない。

食べに行く店に困ったら小松に聞け、とうちの職場ではなっている。
仕事終わりにご飯を食べに行く時は、車通勤の小松さんがいつも車を出してくれる。

そんな小松さんと一緒に晩ご飯、すごく魅力的なお誘いだけど、今日は断らないといけない。


「韓国料理かー、いいなぁ。行きたいんだけど、今日は先約があって」

「そうなんですね、残念です」

「また、誘ってね」


そう言いながら、簡単にメイクを直していたら、美優ちゃんがあれ?と振り返った。

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