派遣社員の秘め事 ~秘めるつもりはないんですが~
此処でサボったのが運の尽き
いい天気だ。
サボるのに絶好の陽気だな。
秋津蓮(あきつ れん)は、頼まれた急ぎの郵便物を会社の裏の郵便局に持っていったあと、土手に囲まれた駐車場で、階段に腰を下ろし、一息ついていた。
よく冷えた缶コーヒーとか飲みたいな、甘いの、と思いながら、しばし、ぼんやりとする。
あー、早く戻らなきゃな。
そう思いながらも、小さな郵便局の上を雲がゆったりと流れていくのを眺めていると、いきなり後ろに人の気配がした。
振り返ると、男が立っている。
煙草を吸っているようだ。
見たことはないが、この会社の社員だろうか。
やたら整った顔の若い男だ。
蓮も小さい方ではないが、男の方が随分大きい……
と思う。
座っているのでよくわからないが。
後ろに立っていた男はこちらをちら、と見下ろしたあとで、
「吸うか?」
と煙草を向けてきた。
いや、吸うわけないだろ、と思っていると、
「俺はいつも此処で一服するんだ。
最近、社内は何処も禁煙禁煙うるさいからな」
と言う。
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