派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
甘い言葉にはなびきません
 


『出てこい、蓮子っ』

 九時半、今日はちょっと早いな。

 渚からの着信時間を確認しながら出ると、開口一番、怒鳴ってきた。

『今すぐ下に下りて来い』

 迎えに来てやった、と言い出す。

「……迎えに来たって、何処に行く気ですか?」
と問うと、

『会社の側のコンビニだ』
と言う。

 すみません。
 いい加減、コンビニから離れてください、と思ったのだが、下でわめかれても困るので、軽く戸締りをして一階まで下りた。

 エレベーターが開いた途端、渚が立っていて、うわっ、と声を上げてしまう。

 渚はこちらを見、
「今日も普段着か。
 可愛いじゃないか」
と言ってくる。

 なんで、この人、しれっとこういうことを言うのかなあ、と思っている間に、
「よし、行こう」
と手を握ってくる。

「えっ。
 ちょっと離してくださいっ」

 会社、すぐ近くなんですけど~っ、と思っている間に、コンビニに着いた。



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