派遣社員の秘め事 ~秘めるつもりはないんですが~
……負けました
朝、秘書室で、葉子と話しながら、デスクを拭いていると、渚が来た。
「おはようございます」
と二人で頭を下げる。
渚が、おはよう、と言いながら、こちらを見たが、蓮は視線を逸らしてしまう。
そのまま、社長室の扉は閉まった。
「あら、よそよそしい。
なにかあった? 蓮ちゃん」
布巾を手に、葉子がにんまりと笑う。
怖いよ。
こういうときの浦島さんは怖い。
逃げられないような感じがあるからだ。
すぐにまた扉が開いた。
「なんか機嫌悪いのか、蓮」
ぎゃーっ。
戻ってきたっ。
蓮は何故か葉子の後ろに隠れてしまう。
渚は、なんなんだ? という顔をしたあとで、
「後でお茶持ってこい」
と蓮に言って扉を閉める。
渚が消えるのを待って、葉子は笑い出した。