派遣社員の秘め事 ~秘めるつもりはないんですが~
社長と言えども、殴ります
「朝から幸せでした」
開口一番そう言った蓮を、えっ? と二人が見る。
奏汰と真知子だ。
昨日の話を詳しく聞こうと、給湯室近くの狭い通路で二人が待ち構えていたのだ。
「素敵な朝食をいただいてしまって」
朝になったら、渚は居らず、徳田という渚の家のメイド長らしき人物が朝食を運んできてくれていた話を語ると、
「ま、そんなもんよね」
と両の腰に手をやった真知子が言い出した。
「あんたに色気のある展開を期待しても無駄だったわね。
だんだん、あんたって人間がわかってきたのよ」
奏汰はそんな真知子の言葉を、苦笑して聞いている。
「そんなんで、よく社長を落とせたわね」
「いや……落としてませんし、落とさせてません」
そんなやりとりをしていると、脇田がやってきた。
「居た居た、秋津さん。
はい」
と見覚えのない回覧用のバインダーを渡してくる。
はい、と受け取りながら、誰に渡せばいいんだろうな、とそれを開くと、中には紙が一枚あった。