国王陛下の独占愛
(1)

 朝日が眩しすぎて、馬の背に揺られながら、セヴェリは顔をしかめて空を見上げる。

 朝日はまだのぼったばかり。

 町外れの居酒屋で、ほとんど明け方まで飲んでいて、テーブルにもたれて眠っただけだから、身体のあちこちが痛い。

 セヴェリは馬をポクポクと歩かせながら、重い頭をガクンと前に落とした。

 その時だ。

 ふと香ばしい良い匂いがただよってくることに気づいて、セヴェリは顔をあげた。

 
 匂いがただよってくるのは、あの大きな木の向こうからだ。

 匂いに惹かれるように、馬をそちらに向けてすすませると、木の向こうに建物が見えてくる。

 どうやら、小さな町によくある、宿屋兼食堂のようだ。

 馬から降り、建物を囲っている柵に馬をつなぎ、キイと表扉をあけて建物の中に入ると、
 でっぷりと太った血色のいい顔の女が、びっくりした顔でセヴェリを見た。



   「あら、まあ...... まだ店を開いていないんですが」



 ここの女将らしいその女がそういうのを片手をあげて押しとどめて、セヴェリは短く言った。



   「いや、いい、待たせてもらうから。」



 そうして女将の返事も聞かず、セヴェリはいくつか並んだテーブルの端の方の椅子にどっかとこしかけた。

 すぐに腕を組んでうつむき、目を閉じる。

 目を開けて見なくても、女将が呆れた顔をして自分を見ているのがわかった。



   「しょがないね、
    店の中を掃除してうるさくしますけど、勘弁してくださいよ。」


 女将は、目をつむったまま、ピクリとも動かないセヴェリにため息をひとつ落とすと、
 さっさとカウンターの方へ歩いていった。



   
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