国王陛下の独占愛
(2)

          〜4年後〜


   「まったく、あっちでもこっちでも規制だらけで
    嫌になっちまう」

 
 町外れの宿屋兼食堂の主人、ルカは、ジャガイモの入った袋をおろすと
 妻に愚痴をこぼした。

   
   「しょうがないよ、国王陛下のご一行が通るんじゃあね」
  
   「前国王は長く病気だったけど、今度の国王は若いし、身軽に
    あちこち出かけるらしい」
 
   「その度に大変なのは周りの者さ、たまんないね」


 女将のマルロはじゃがいもの皮を剥く手を休めずに言う。

   
   「まあ、国王陛下を一目見ようとやってきた人のおかげで
    宿屋は繁盛だけどな」

 
 ルカがにんまりと笑った。

   
   「おかげでこっちは、行列を見に行けないよう」

 
 そうマルロがため息をついた時だった。

 扉を開けて、物々しい雰囲気の兵士が二人入ってくる。

 カウンター前のテーブル席に座っていたルカとマルロは
 驚きで目を見張り、ルカが、ガタンと椅子を鳴らして立ち上がった。

 そんな二人の前までやってきて、兵士が告げる。


   「国王陛下が、今日ここにお立ち寄りになる、心しておくように」
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