SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
◇黒木誠という男
———— D.S.P本部 ————
「何が一体どうなっているんだ?」
一ノ瀬徹也はまたも困惑していた。
例の少女が、半透明の球体のようなもので覆われているのだ。
突然出現したそれの風圧に、イスやテーブル、棚が倒れ、書類がばらばらと床に散らばった。
球体の中では電気が放電しているかのように、バチバチと火花が散っている。
「 バリアーか 」
中の少女は相変わらず無の表情だ。
しかし、静かに横たわるその姿は、おとぎ話の眠り姫を連想させた。
陶器のようになめらかな白い肌、コンパクトで筋が通った鼻、ふっくらとした唇。
顔、体のパーツすべてがゆるぎない美しさをまとっている。
「指揮官! 何があったのですかっ!」
騒ぎを聞きつけ、D.S.Pの隊員がわらわらと集まりだす。
「おっほ♪ いよいよショータイムの始まりですかあ?楽しみい~♪」
「おまえなあ、」
黒い瞳を輝かせ、そわそわするアフロの男、黒木を見る。
この男、黒木誠(くろきまこと)はヒーラーだった。
黒木は自己治癒力に働きかけ、代謝速度を活性化させる事で病気やケガを治す能力を持っていた。