SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

この少女の傷は黒木が治した。
しかも黒木はここにきて一番の実力を見せつけた。

普段なら、治すのに数日はかかるであろう少女の傷を、たった半日で完璧に治してしまったのだ。

これには一ノ瀬はじめ、D.S.Pの全員が驚いた。

なにより一番驚いていたのは治した黒木本人であった。


「はっは~♪ 能あるタカは爪を隠すってえ、アレ、オレの事だったんスねえ~?」


浮かれる黒木。
だが一ノ瀬は冷静に分析していた。


(いくら黒木でも限界がある。内側から何かの力が働いているとしか思えん)



それから黒木はずっと少女のそばにいた。
黒木がずっとD.S.Pにいる事は極めてめずらしい事だった。

黒木は奔放な男だ。一応D.S.Pに在籍しているものの、すんなりとこちらの指示に従う事は滅多にない。

疑心暗鬼で、ひねくれ者、そのくせお調子者の黒木に、一ノ瀬はいつも手を焼いていた。
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