「誰だ?こんなとこにこんな物置いたのは?」


「どうかしました?」



ある日杠が林残に行くと、竺牽捏が何やら怒っていた。



「ユーハちゃん!なんだかよく分からない物が置いてあってさ。」


「見せて貰ってもいいですか?」



「ああ、これだよ。ユーハちゃんが演奏するピアノなのに。」



大切なピアノをぞんざいに扱われることを竺牽捏は大変嫌う。



「竺牽捏さん、これはチューニングハンマーですよ。」


「ち、チューニングハンマー?」



聞き慣れない言葉に、竺牽捏は首を傾げる。



「ピアノの調律に使うものです。調律師さん来たんじゃありませんか?」


「ああ、定期点検に。…まさか。」



「忘れ物、ですね。届けてあげてください。大事なものですから。」



杠の為にピアノを調律してくれる人物の忘れ物と分かり、竺牽捏はすぐに連絡を入れるのだった。



「店長、ピアノのことになると熱いからねー。」


「そのくせ知識は全く無いのが玉に瑕なんだよね。」


「まあ私達も聴く専門なんだから店長のこと言えないけど。」



なんとも変わり身の早い竺牽捏を、キャバ嬢達は呆れながら笑って見ていた。

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