雪に塩
「ショー君!」



「ジーザス?」


「どうしたんだよ?そんなに慌てて。」



大学でまたナンパをしていた為に放っていかれた邃巷が駆け込んで来た。



‥‥トロイメライが鳴り響く。‥‥



「これが道端に落ちてて…!」


「これは……」



邃巷が手にしていたのは、ピンクの匂い袋が付いた白杖。



「ユーハちゃんのものだ。」



‥‥突然突き付けられる真実が壊してゆく常識。‥‥



「道端ってどこだよ!?」



「大学の裏手の小道。ほら前に見熊ちゃんが可愛いって言ってた雑貨屋の通り!」



「その周辺にユーハちゃんは?」


「探したんだけどいなくて…。これって杠ちゃんにとって大切なものでしょ。だから杠ちゃんに何かあったんじゃないかって……」



裏手に建ち並んでいるのは、その雑貨屋と民家しかない。


白杖無しに外出が出来ない杠が、その雑貨屋にいないとなれば。



‥‥逃れられない運命が覚醒め、‥‥



「ショー君、大変!」



飛び込んで来た蛉葭に続いて、蕎寡と莢啝も息を切らして現れる。



「杠ちゃんがっ!」


「誘拐された!!」




‥‥静かな幕開けとなる。‥‥
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