彼の瞳に独占されています
◆今までの自分を改めるとき


ひとり高級ホテルに宿泊した翌朝、着替えた服などの荷物は駅のコインロッカーに預け、そのままの足で職場へと向かった。

駅から徒歩五分の、大通りに面した楠木(くすのき)百貨店。創業百年を超える老舗デパートであるここの四階に、私が勤める紳士服売場がある。

社員専用エレベーターで上り、洗練されたフロアの裏側にあるロッカールームに入ると、女性社員数人が制服に着替えているところだった。

挨拶をしながら自分のロッカーの前に行くと、その隣に立つ、すでに着替え終わっていた後輩の女の子が、私に気付いてにこりと微笑む。


「あ、先輩、おはようございます!」


胸のあたりまであるストレートロングの髪を、さらりと揺らして会釈する彼女は、相馬 弥生(そうま やよい)ちゃん。

すべてのパーツが整った、アイドルのような顔立ちに加え、明るくハキハキとした性格はとても好感度が高い。惚れない男はいないんじゃないかというくらいの上玉だ。

私も「おはよ」と笑みを返して、いつも通りに着替えを始めようとしたのだけれど。


「先輩、昨日デートだったわりにはなんか疲れてませんか?」


くりくりの二つの瞳が私の顔を覗き込み、鋭いことを言うものだからギクリとした。

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